「テニスをやっていたなら、ピックルボールもすぐできる?」と気になっている方は多いはずです。見た目はテニスに似ていますが、コートの広さやネットの高さ、サーブの打ち方、「キッチン」と呼ばれるエリアなど、実はルールがかなり違います。

結論から言うと、ソフトテニス・硬式テニスの経験は大きな武器になります。ただし、テニスのクセがそのまま反則になる場面もあります。この記事では、USA Pickleballの2026年版公式ルールと、テニス・ソフトテニスの競技規則をもとに、違いと始め方を経験者の目線でまとめました。

ピックルボール・ソフトテニス・硬式テニス・パデルの比較表

まずは4つの競技を並べて比べてみましょう。

項目ピックルボールソフトテニス硬式テニスパデル
コートの広さ6.10m×13.41m(シングルス・ダブルス共通)ダブルス10.97m/シングルス8.23m×23.77m(硬式と同じ)ダブルス10.97m/シングルス8.23m×23.77m10m×20m(壁で囲む)
ネットの高さ中央86cm/両端91cm1.07m(水平に張る)中央0.914m/ポスト1.07m中央0.88m/両端0.92m
打つ道具パドル(ガットなしの板状)ラケット(ガットあり)ラケット(ガットあり)穴のあいた板状のラケット
ボール穴のあいたプラスチック製ゴム製(30〜31g)フェルトで覆われたボール(56.0〜59.4g)テニスに近いボール(56.0〜59.4g)
サーブ下から(腰より下で打つ)/ワンバウンドさせて打つ方法も可上から・下からどちらも可上から打つのが一般的バウンドさせて腰の高さ以下で打つ
サーブの回数1回(セカンドサーブなし)2回2回2回
独自ルールキッチン(ノンボレーゾーン)・ツーバウンドルール――壁に当たった球も打ち返せる
点数11点先取・2点差が一般的、サーブ側だけが得点4ポイント先取でゲーム0・15・30・40でゲームテニスと同じ数え方

※ピックルボールはUSA Pickleball「2026 Official Rulebook」、ソフトテニスは日本ソフトテニス連盟の競技規則、硬式テニスはITF「Rules of Tennis 2026」、パデルはFIP「Rules of Padel」によります。

表の中で、経験者が特に意識したいのは次の3点です。

  • コートは約3分の1:ピックルボールのコートは、テニスのダブルスコートの面積の約3分の1。ネットからベースラインまでは約6.7mで、テニスのサービスライン(ネットから約6.4m)より少し後ろにあたります
  • ネットが低い:中央の高さは86cmで、硬式テニス(91.4cm)より約5cm、ソフトテニス(1.07m)より約21cm低くなります
  • ボールが弾まない・軽い:穴あきのプラスチックボールは、テニスボールほど弾まず、スピードも落ちやすいのが特徴です

テニス経験者がピックルボールで有利な点

ソフトテニスのラケットでボールを打つ場面

ピックルボールは、テニスやバドミントン、卓球の要素を組み合わせたスポーツです(USA Pickleball公式ルールブックの説明)。そのため、テニス経験者は最初から有利な点がいくつもあります。

ボールへの入り方とフットワーク

ボールの落下点を予測して打ちやすい位置に入る動きは、テニスと共通です。細かいステップで体勢を整える力はそのまま活きます。

ダブルスの陣形と前衛の感覚

ピックルボールはダブルスで行うことが多く、2人の位置取りやパートナーとの声かけが勝負を分けます。ソフトテニスは基本がダブルスのため、前衛・後衛の役割分担や、相手の配球を読む感覚はピックルボールでも役立ちます。

回転をかけて打つ技術

パドルにはガットがありませんが、ボールに回転をかけることはできます。スライスやドライブなど、回転でボールの軌道を変える感覚はテニス経験者の強みです。

ソフトテニス出身のプロ選手もいる

ソフトテニスからピックルボールに転向し、海外で活躍している選手もいます。船水雄太選手は、ソフトテニスで2015年の世界選手権の団体優勝メンバーとなり、2024年1月に単身渡米してピックルボールに転向しました。2025年3月には米国のプロリーグ「メジャーリーグ・ピックルボール(MLP)」のドラフトで指名され、日本人として初めてのMLP選手になりました(所属事務所のプレスリリースによる)。

テニス経験者が戸惑いやすい6つのポイント

一方で、テニスのクセがミスや反則になることもあります。始める前に知っておきたい6つのポイントです。

1. キッチン(ノンボレーゾーン)ではボレーできない

ネットから両側2.13mのエリアは「ノンボレーゾーン」、通称「キッチン」と呼ばれます。このエリアの中では、ノーバウンドで打つ(ボレーする)ことが禁止です。

  • キッチンに足が入った状態でボレーすると反則
  • ボレーした勢いでキッチンに入ってしまうのも反則(ボールのプレーが終わった後でも同じ)
  • ボレーをしていなければ、キッチンに入ってもよい(ワンバウンドした球を打つときなど)
  • キッチンに入った後は、両足をキッチンの外に戻してからでないとボレーできない

ソフトテニスの前衛は、ネットにつめてボレーで決めるのが得意な方が多いはずです。ピックルボールでは、キッチンのラインの手前で止まってボレーする意識が欠かせません。

2. サーブは下から・腰より下で打つ

ピックルボールのサーブ(ボレーサーブ)には、次の決まりがあります。

  1. パドルを下から上への弧を描くように振る
  2. 打つ瞬間、パドルの先が手首より上に出ない
  3. 打つ瞬間のボールの高さが腰より下

ソフトテニスにも下から打つ「カットサービス」がありますが、ボールを切るように振るとパドルが上向きの弧にならないことがあります。また、トスの段階でボールに回転をかけることも禁止です。不安な方は、ボールをワンバウンドさせてから打つ「ドロップサーブ」から始めると安心です。

3. サーブは1回だけ

テニスやソフトテニスのようなセカンドサーブはありません。フォールトするとサーブ権が移ります(ダブルスでは、試合開始直後を除き、まずパートナーに移り、2人ともフォールトしたら相手に移ります)。強く打つより、確実に入れることが大切です。なお、サーブがネットに触れても、正しいサービスコートに入ればそのまま有効です。

4. ツーバウンドルール

サーブを受ける側は、サーブをワンバウンドさせてから返します。さらにサーブ側も、その返球をワンバウンドさせてから打たなければなりません。この2回が終わるまでは、ボレーできません。

テニスのように、サーブを打ってすぐネットにつめる「サーブ&ボレー」はできないので注意しましょう。

5. ボールが弾まず、フルスイングが合わない

ピックルボールのボールは穴のあいたプラスチック製です。屋内用は穴が大きめ、屋外用は穴が小さめのボールが一般的に使われます。テニスボールほど弾まないため、ボールが来るのを待っていると打点が低くなりがちです。

また、コートが短いので、テニスのようにフルスイングするとアウトになりやすくなります。ピックルボールでは、キッチンに柔らかく落とす「ディンク」と呼ばれるショットのラリーが多く、力より正確さが求められます。

6. 点数の数え方が独特

ピックルボールは、サーブ側がラリーに勝ったときだけ得点します。ダブルスでは「自分たちの点数・相手の点数・サーバー番号(1か2)」の3つの数字をコールし、試合開始は「0-0-2(ゼロ・ゼロ・ツー)」です。テニスの「15・30・40」とはまったく違うので、最初は戸惑うかもしれません。

テニスコートでピックルボールはできる?

ネットが張られた青いピックルボールコート

結論から言うと、テニスコートでもピックルボールはできます。USA Pickleballも、テニスとピックルボールでコートを共用する場合、最も多いのはテニスコートだと紹介しています。ただし、ラインとネットの準備が必要です。

ライン:ピックルボール用のラインを足す

テニスコートのラインのままでは、ピックルボールのコートの広さになりません。ピックルボール用のラインを追加する必要があります。

  • 共用コートでは、テニスのラインにピックルボール用のラインを重ねて引く方法がある
  • テープで仮のラインを引く場合は、はがした後に跡が残ることがあるため、目立たない場所で試すよう案内されている
  • ラインを引く前に、必ず施設の管理者の許可を取る

USA Pickleballに掲載されている施工業者の例では、テニスコート1面の区画を、ピックルボールコート2〜4面に改修する事例が紹介されています。

ネット:高さが合わない

ネットの高さも違います。

ネット中央の高さピックルボールとの差
ピックルボール86cm―
硬式テニス91.4cm約5cm高い
ソフトテニス1.07m(水平)約21cm高い

特にソフトテニスのネットは水平に張るため、中央でもピックルボールより約21cm高くなります。そのままでは別の競技に近くなってしまうので、ピックルボール用の移動式ネットを使うのが現実的です。体験会や専用施設ならコートとネットが用意されているので、まずはそこで試すと手軽です。

ソフトテニス・テニス経験者のピックルボールの始め方

体育館でラケット競技をするプレーヤーの足元

最後に、経験者がピックルボールを始めるステップをまとめます。

ステップ1:体験会やサークルを探す

最初は道具を買う前に、体験会やレンタルのある施設で試すのがおすすめです。

  • 国内の統括団体「Pickleball Japan(PJ)」の公式サイト(都道府県連盟や公認コートの案内)
  • 自治体のスポーツ施設やスポーツ教室
  • スポーツメーカーが運営に関わる施設の体験イベント

なお、日本ピックルボール協会(JPA)とピックルボール日本連盟は統合し、2026年4月14日から「Pickleball Japan(PJ)」として活動しています。古い記事の旧団体名に注意しましょう。

ステップ2:基本ルールを3つだけ覚える

ルールは、次の3つを押さえれば最初のゲームに参加できます。

  1. サーブは下から・腰より下で、対角線のサービスコートへ1回だけ
  2. ツーバウンドルール:最初の2回はワンバウンドさせてから打つ
  3. キッチン:ネット前2.13mの中ではボレー禁止

ステップ3:道具をそろえる

続けると決めたら、自分のパドルを用意しましょう。パドルは長さ43.18cm以下、長さと幅の合計が60.96cm以下と決められていて、重さの制限はありません。テニスのラケットより短く、重さもさまざまなので、実際に握って振ってから選ぶと失敗しにくくなります。

シューズは屋外ならテニスシューズで、体育館なら屋内用のシューズでプレーしましょう。

ステップ4:「力を抜く」練習から始める

テニス経験者が最初に取り組みたいのが、ディンク(キッチンへの柔らかいショット)の練習です。強打で決めるテニスの感覚を一度リセットし、低く短いボールでつなぐ練習をすると、ゲームに入りやすくなります。

よくある質問(FAQ)

Q. ピックルボールとテニスの一番の違いは何ですか?

コートの広さ(テニスのダブルスコートの約3分の1)と、キッチン(ノンボレーゾーン)・ツーバウンドルールがあることです。サーブも下から腰より下で打つと決められています。

Q. ソフトテニスのラケットでピックルボールはできますか?

できません。ピックルボールは、ガットのない板状の「パドル」を使います。体験会ではパドルを貸し出していることが多いので、最初は借りて試しましょう。

Q. テニスコートでピックルボールはできますか?

できます。ただし、ピックルボール用のラインと、高さの合ったネット(中央86cm・両端91cm)が必要です。ラインを引くときは施設の許可を取りましょう。

Q. ピックルボールとパドルテニスの違いは何ですか?

名前は似ていますが、別の競技です。ピックルボールは穴のあいたプラスチックボールを使い、キッチンやツーバウンドルールがあるのが特徴です。なお、パドルテニスは、この記事の比較表に入れている「パデル」とも別の競技です。名前が似ているので、体験会や道具を探すときは競技名をよく確かめましょう。

まとめ

  • ピックルボールのコートはテニスのダブルスコートの約3分の1、ネットは中央86cmと低い
  • ボールは穴あきのプラスチック製で、テニスほど弾まない
  • キッチンでのボレー禁止・ツーバウンドルール・下からのサーブ1回がテニスとの大きな違い
  • テニス経験者はフットワーク・ダブルスの感覚・回転の技術が強み
  • テニスコートでもできるが、ラインとネットの準備と施設の許可が必要
  • 始めるなら、体験会で道具を借りて試すのが近道

まずは近くの体験会を探して、テニスとの違いを実際のコートで確かめてみましょう。

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